生命の火が、この星を照らしている 2006年、瀬戸内海に面する四国の海運都市。 脚の故障で陸上選手の夢を失くした少女、星守明桜(ほしがみあきお)は親友の海添彩希(うみそえあやの)とともに高校に進学。部活や新しい友人たちと出会い、空っぽだった明桜は少しずつかつての自分を取り戻しつつあった。 しかし、ある日彩希が突如姿を消してしまう。 この星には、太古より続く戦いがあった。かつて神に与えられた、空の魂を持つ8体の巨人《星辰機(スターマキナ)》。 『これに乗り、百年に一度現れる《簒奪者》より生命の火を守れ。そして絶やすな』 その言葉に従い、星辰機に選ばれた乗り手は戦い抜いてきた。 それから幾星霜。全ての星辰機が斃れてから100年。 次の100年を繋ぐため建造された人工の巨人《星辰機・デスタニア・レプリカ》の精神燃料として捧げられた彩希の魂に選ばれ、明桜は全ての生命を守る戦いに巻き込まれていく。 彩希とともにいるために。彩希へ一歩踏み出すために。そしてもう一度、自分を信じるために。 運命を奪い奇跡の熱量が爆ぜた時、存在しない9番目の巨人が目覚める。 其は《ヴァリシア》。冥王の名を冠する白亜の戦士。 ――これは、すべての始まり。 きっといつか忘れられる、ありふれた星の、私たちの物語だ。
生命の火が、この日々を照らしている 第一の簒奪者の襲来を退け生命の火を守り、帰還した明桜と彩希。 来る第二の簒奪者との戦いに向け、彼女たちは日々を過ごしてゆく。 時は流れ、夏。長期休暇は若人の楽園。 青い空に海花火。買い物訓練宿題合宿。一度きりの高1の夏。 変わってしまった日常は、それでも奇跡で溢れていた。 そして始まる第二の儀式。明桜と彩希はヴァリシアを駆り、 新たな戦いへ身を投じる。 変わり始めた関係も、どうしようもない現実も、その先にある運命も。繰り返す日々は幸福で、幸福とは今だった。 運命の先、二人の心が交わる時、第九の巨人は仮面を棄てる。 すべての《今》を愛するために。もう何一つ零さぬように。 ――これは、あの夏の一片。 きっといつか忘れられる、ありふれた日々に、私たちがいた記録だ。